東京協会認定実務従事事業は、東京協会が独自の枠組みで実務従事機会を提供するものです。現在の中小企業診断士制度は、資格更新をするために、5年間で実務従事ポイント30 点を取得するものとなっております。実務従事支援部は、「実務従事ポイントを取得できず診断士資格を更新できないという人を一人も出さない」という大きなテーマのもとに発足し、実務従事事業の運営をサポートしています。実務従事の指導員、副指導員のご協力により、毎年60件前後の実務従事案件を提供しております。この場を借りてご協力していただいた指導員、副指導員の皆様へお礼を申し上げます。

2021年度も実務従事案件は、「Web募集」「Webマッチング案件」にて多数の案件を提供しております。4月に開催された「春季Webマッチング大会」では、多様な業種、そして「経営改善」「組織活性化」「事業再構築」「DX戦略」「成長戦略」「販売戦略」などいろいろな経営課題、テーマにて上記の表通り17案件の提供がありました。

昨年、TOKYO SMECAニュース(令和2年9月号)にて「東京協会の実務従事に参加してどうでしたか?」のタイトルで、実務従事のイメージが浮かぶように座談会形式で掲載させていただきました。今回は、この17案件の中で、案件名:再建後の成長戦略策定(指導員:塚越 祐之会員(城北支部)) の案件に関わった「指導員」「副指導員」「参加者」にインタビューしました。さらに、この実務従事案件としてコンサルティングを受けた企業の「経営者」にもインタビューを実施、経営課題に対する参加者の提案に対する感想をうかがいました。
一つの案件に対して、「指導員」、「副指導員」、「参加者」、そして企業の「経営者」の立場から、実務従事案件がどのように進行し、どのような効果があったかを見ていただけると幸いです。

実務従事事業の事例ご紹介 塚越祐之指導員(城北支部)
事業戦略プロジェクト型の実務従事

私の実務従事はけっこうガッツリ系です

2021年春の実務従事は、新型コロナウイルス感染症対策としてWeb開催となった。指導員のプレゼン資料が掲載される中で、塚越祐之指導員の資料にちょっとユニークなキーワードを見つけた。
参加にあたっての条件として、 一般的なパソコンスキル・会合時のWebへのアクセスのほかに、「けっこうガッツリ系です。」との記載がある。
また、プレゼン資料には、実施企業の概要や実務従事にスケジュールだけではなく、実務従事実施期間中、どのような雰囲気で参加できるのかが伝わってくるほか、職業診断士としての歩き方や塚越指導員のコンサルティングノウハウが聞けることなどが散りばめられており、参加者の興味をそそる内容といえるだろう。

総合診断が基本となっている中小企業診断士試験合格者向けの「実務補習」と違い、実務従事事業は、中小企業診断士の実務ポイント取得の場として、また診断士のスキル向上や実践の場として展開されている。実施企業の特性や成長ステージ、実務従事を実施する時点での事業環境などによっても、展開方法はさまざまだが、今回は一つの実施事例として、塚越指導員、および参加者、実施企業の経営者に話を聞くことができたのでご紹介したい。

テーマは成長戦略

塚越指導員の実務従事は「提言の方向性」をあらかじめ決めており、参加者に提示している。総合診断報告書ではなく、テーマに沿った事業戦略の提言書を作成するのが、このチームの最終目的となる。
その方針について塚越指導員に具体的に聞いてみた。

インタビュアー(以下Iに省略):テーマをあらかじめ決めて実施するその意図は?
塚越祐之指導員(以下敬称略):実務従事を実施する企業は、すべて私の顧問契約先です。すでに数年の付き合いがありその企業の課題はよく知っています。実務従事は、その課題を解決するために、6人がかりで情報収集を行い、戦略を考え、企業に具体的な提言をする。いわば事業戦略プロジェクトみたいなものかと思います。
「実務補習」では、総合診断によって中小企業に対する診断助言をどのようにするのか診断士が学ぶ場ですが、実務従事では、参加者にコンサルティングの実務を実体験してもらいスキルアップしてほしいと思っています。また、実施企業にとっても、顧問コンサルタントの私にとっても、今後のクライアント経営に活かすために、実務従事はこの上ない戦略策定の場だと思っています。参加者が実務従事に参加し、与件をあまり与えられずに資料を見てヒアリングを行っても、その企業のことがわかるのはほんの一部です。もちろん企業によっては総合診断もいいと思いますが、私は顧問先の次の成長に向けた戦略立案の場にしたいと思っています。

I:実施企業や方向性をどのように決めるのですか?
塚越:当社では実務補習(総合診断)は2年前に一度実施していますが、実務従事は緊急性の高い企業や、新たな成長戦略を考える企業を選択します。その中でも、「ぜひやって欲しい」という経営者のところを優先します。戦略の方向性はある程度決まっています。顧問先のほとんどは、これまでに収益性や財務面での改善を行い、経営状態がよくなってきています。これからは新たな成長に向けた成長戦略が必要という時に実務従事を実施します。
方向性は、販路開拓だったり、新規事業開発だったり、前向きなテーマなので、実務従事そのものが楽しいですね。参加者だけでなく指導員、副指導員、全員で一緒に考えます。私が顧問先の戦略を一人で考えるより、これだけの人数でやると効果は絶大ですね。

I:実務従事の進め方について教えてください
塚越:まず、企業の情報を参加者に提供し、私と同じ目線に立っていただくところからスタートします。その企業と最初に会った時の経営状態がどうだったか、どこに落とし穴があったか、経営者に対してどのような言葉をかけてきたか、そしてどのような改善を行ってきたかを話します。事前に資料を渡しても説明しないとわからないので、実務従事の初日にこれらの情報のインプットと、提言したい方向性を話します。
渡す資料は、その企業の財務データや組織図、事業別の売上などです。ほかに、私がコンサルティングで使っている資料などはすべてお見せしています。まずは、同じ土俵で話ができるように、実施企業の情報にキャッチアップしていただきたいと思っています。

I:具体的に実務従事スケジュールはどのようになりますか?
塚越:はい、最近は初日に企業の情報を伝えます。事前にその業界のことなど調べてきてもらうこともあります。そして、私が考えている方向性を示した1日目の終わりに、何を提言したいかを参加者に聞きます。その場で「これはいい!」と私の肚に落ちる提案であれば即採用しますね(笑)。でも、その時点で、参加者からは大きく違った意見が出ることはあまりないですね。それよりも、実施企業のさらに詳しい情報や、疑問などを質問してくることの方が多いです。ここでピント合わせをしていくので、だんだん参加者の思考の方向性も一致してきます。ある程度、「こういう提案がいいよね。」というのがいくつか出てきたところで、参加者の役割分担を決めます。

企業訪問は2日目に行います。実務補習の時は、1日目に訪問しますが、実務従事では2日目の訪問が多いですね。事前にインプットをしているので、質問もピントが絞られます。その分、質問も深堀ができて、経営者が生の声で答えてくれているなと感じますね。

3日目は、担当したパートについて、それぞれが情報収集を行い、資料を作成して持ってきてもらいます。結構ハードです(笑)。そして全員の前でそのプレゼンをしてもらいます。
でも、そこで終わりではなくて、その後に修正が入ります。皆で意見を言ったり、他にこんなのはないかとその場で調べたり、改めてシミュレーションしてみたり・・・。
指導員・副指導員も含めて「全員で考えようぜ。」というスタンスです。全員でブラッシュアップ・深堀をしていきます。情報収集能力に関しては、さすが中小企業診断士だと思いますね。本当に皆さん、よく探してきたねということも多く、私も新たな発見があります。

4日目、5日目も、他の担当者の内容と整合性を取りながらブラッシュアップし、完成度を高めていきます。これも全員参加です。完成度が上がってくると、皆のテンションも上がりますね。この繰り返しなので、最後の報告会に向けて改めてリハをやったりする必要もないですね。

I:皆で意見交換をするということですが、逆に意見が割れてまとまらないということはないのでしょうか?
塚越:うーん、こういう方向性で提言をまとめて欲しいと言っているので、意見が対立することはあまりないですね。基本的には、参加者が皆、同じ方向を向いているというか、違う角度からの意見によって、より深く検証していくことはあっても、対立はありません。提言の方向性を示すっていうのが、やはり一番のポイントですね。

I:報告書をまとめる上での方針はありますか?
塚越:「提言項目は少なく」、「中身は深く」とお願いしています。中小企業は、同時に実行できる施策が限られます。少ない施策を、「ていねいにわかりやすく」報告書にしてほしいと思っています。深い内容にするには、情報収集も大切になります。その点、実務従事のスキームを使うと私ひとりでやるより、はるかに素晴らしいレポートになります。6人の診断士に集まってもらう最大のメリットは、情報収集の量と幅がすごく広がることだと思いますね。

I:ガッツリ系というキーワードが気になったのですが、参加者にはどのようなことを求めていますか?
塚越:やる気ですね(笑)。私からノウハウを盗んでやろうというガツガツした参加者は大いにウエルカムです。それを感じて欲しいので「ガッツリ系」とあえて記載していますが、たまにガッツリ系って書いたことで、一人も来なかったらどうしようという恐怖感もあります(笑)。
ただ、それを見て、それでも参加してくれる方々なので、皆さん本当にやる気のある方に来ていただいていますね。

指導員としてのありたい姿

I:実務従事期間中の指導に関する方針を教えてください。
塚越:実務従事は、参加者に診断の場を提供するというよりも、若手や企業内診断士、これから独立する人、独立したての人に、コンサルティングのノウハウを伝える場だと思っています。
実務従事に関することだけでなく、毎回、開始前に30分くらい時間をとって、職業診断士の歩き方などの話をしています。「診断士の仕事ってこういう種類の仕事があるよ。」とか、「こうやって仕事を取るんだよ。」「どのくらいの年収を目指すか、そのためにはこんな事業構成があるよ。」みたいな話をします。あとは、今回の企業だけでなく、中小企業の経営について、私がこれまでにやってきた経営改善の方法や、考え方などを伝えています。また、経営者にどのような話をするのか、課題の指摘の仕方だったり、褒め方だったり、そんな話もしています。
実務従事のミーティングでは、だいたい「いいね、いいね」と言いながら聞いています。褒められるのが嬉しいのは企業も診断士も一緒です(笑)。クライアント企業のことを一番知っているのは私ですから、それはすでにやってきたとか、今の状況やその方法では難しい等補足したり、方向性がズレると指摘したりもします。ただ、その方向であっているかは、皆さん都度聞いてきますし、他の参加者から質問が出たり、逆に誰かが答えたりすることも多いので、私も含めてお互いに学びあっているところがあります。

I:実務従事の参加者とはその後もつながりがありますか?
はい、1回だけでなく、何回も参加してくれる方もいます。場合によっては提言したメンバーにお仕事を依頼することもあります。私は製造業や建設業が得意ですが、ITや海外展開、BtoCのセンスのよいマーケティングなど、私が苦手なことは得意な人に頼みます。
また、実務補習と実務従事に参加してくれた方たちのグループがあります。今は懇親会も難しい状況ですが、いろいろなスキルやノウハウを持った人が集まり、ネットワークが広がっています。

I:実務従事で感じる効果はなんでしょうか?
まず、クライアント企業から信頼を増す効果は絶大ですね。さらに、提言は自分の提言でもあるのでやらないわけはない。それをモニタリングするので、その内容が実行され成果が出ることは多いです。実務従事の参加者にとっても、自分の提言が採用されて、それで財務状態もピカピカになっていくと、自信にも繋がるでしょうし、やはり嬉しいのではないかと思います。
実務従事で作った経営改善計画は、そのまま金融機関に提出することもあります。社長によっては、提言書を1年以上左手に持って会合に出てくる方もいます。実務従事の参加者に、数年後に希望すればその企業を見に行くこともできるというと、皆行きたいっていいますね。参加者は、実務従事ポイント獲得が最大の目的という方も多いですが、せっかく一企業の戦略策定に関わったのなら、その場限りではなく、その先どうなったのかを見ることがコンサルタントの醍醐味だと思います。
実務従事を通して、そのようなことを伝えていきたいと思っています。

実務従事参加者の声

塚越指導員のインタビューを通して、参加者はモチベーションも高く、参加者全員で議論し作り上げていく場面が浮かんできた。では、実際に参加したメンバーはどのように感じたのか、彼らにも話を聞いてみた。

この春、塚越指導員の実務従事に参加したメンバーは6名。メンバーの半数は支部の研究会などを通じて塚越指導員と接点があり、ぜひ塚越氏の実務従事に参加したいという指名買いのメンバーだ。残りの半数はマッチングのプレゼン資料に興味を持ったり、すでに実務従事に複数参加しており、これまでと違う指導員、違う業種を選んで参加してきたメンバーとなっている。

惜しみなくノウハウを提供してくれた6日間

I:塚越指導員の実務従事に申し込んだ決め手は何ですか?
山本:以前、「診断士に求められるのは『やることは地道ですが結果は劇的です』をつくること」と研究会で塚越先生の話を聞いて、その時から機会があれば、ぜひ塚越先生の指導を受けてみたいなと思っていました。ほかにも「毒まんじゅう食うな」とか、いろいろな塚越語録があって(笑)。毒まんじゅうというのは、採算度外視の受注のことで、塚越先生のコンサルティングでよく出てくるお話なのですが、そういうキーワードは頭に残りますね。
日坂:マッチングのプレゼン資料を見て決めました。その中で「ガッツリ系です」という書き方をされていて、本当にがっつりされる方はガッツリ系って書かないなと思って、ちょっと面白そうだと思って申し込んだのがきっかけです。実際にとても有意義で楽しい時間でした。
小坪:世の中の企業経営戦略の教科書は多くが大企業向けで、中小企業向けのものはほとんどありません。その内容は、中小企業には不向きなものが多いです。中小企業は千差万別であり“望ましい戦い方”はさまざまです。塚越先生は、ご経験・実績に基づき、中小企業の戦い方を整理・体系化してお話しくださるので、独立を目指す者には、とてもありがたく、ちゃんと学びたいなと思いました。

I:実務従事の進め方はいかがでしたか?
山本:提案までの進め方がよく練られているなと思いました。企業に対しても、ヒアリングから報告までが、最短に見えるようなスケジュールになっていると思いました。自宅で作業して集まった時は議論が中心の進め方だったので、短期間でとても効率的に進められたと思いました。
太田:初日に企業の概要を聞けたことはありがたかったと思います。はじめに、「この企業は今までこんなことがあって、第2フェーズでこういう段階に入ったから、今回みんなにこういうテーマを設けたんだ」と説明を受けました。その方向性がしっかり見えていたので、翌日のヒアリングでどんなことを聞かなければならないかも合致していたと思います。よく、ヒアリングが終わって整理してみると、これ聞いてないなと思うことも多いのですが、今回はそれが少なかったと思います。
山本:先生方が戦略のストーリーといくつもの仮説を持っていらっしゃって、実務従事ではそれをベースに、われわれがいろいろな調査と検証をし、ちゃんと形にして提案することを心掛けました。
太田:クライアント企業との信頼関係がベースにあって、その上で提案の方向性を持っていらっしゃるので、それを踏み外さないようにしつつ、品質とかレベルの高いものを提示しないと先生方に迷惑をかけてしまう恐れがあるため、そこは気をつけました。

I:塚越指導員の指導はいかがでしたか?
鈴木:本当に惜しみなくノウハウを提供していただいたなという印象です。たとえば、見積もりの積算方法なども詳しく包み隠さず教えてくださるし、使っているシートも見せてくれるだけでなく、使っていいよ、と提供していただいたり、本当にありがたいなと思いました。日々の定期的な訪問において、経営管理の部分についてもどういうことをやっているか、といったことも全部教えていただき、実際のコンサルティングを垣間見ることができました。
本圖:数字による裏付けの重要さを痛感しました。詳細な試算は難しくても、各種前提をつけた状態で数字を提示することで、相手の納得感が大きく増すということを改めて認識しました。
太田:クライアントと向き合うマインドというものを見せていただいたというか、真摯に向き合う姿勢をお話の端々から感じ、すごく勉強になりました。やはり独立されている方のプロ意識と言うか、そういうことを垣間見られたのは、とてもありがたかったと思います。
日坂:実務従事以外のことでも、「気になることとか、独立するにはどうしたらいいかとか、何でも答えるよ」と最初に言っていただき、興味があることなどを聞きやすかったです。自分が悩んだことも手取り足取り教えていただきましたが、他のメンバーにもオープンな場でみんなの前でアドバイスをされるので、横で聞いていてとてもためになりました。

実施企業の経営者の声

今回、実務従事を実施した企業は、粉体受託加工を行う西東京市に本社を置く「荒木製作所」である。最終日6日目の報告会では、社長の荒木氏、副社長の中堀氏に対してプレゼンを行った。その報告会について荒木社長、中堀副社長にも感想をお聞きすることができたのでご紹介したい。なお、報告会には、社長、副社長、参加者6名と塚越指導員、梁川副指導員の他に、金融機関から2名も同席されていた。経営陣だけでなく、その金融機関の担当者から「これをみて勉強させていただきます」と言われたことは、参加者にとっても嬉しい話だったそうだ。

I:実務従事の報告会を終えて、どのように感じていますか?
荒木社長:期待以上に素晴らしい内容でした。たとえば人員の確保やホームページの記載内容まで、漠然とした内容ではなく、すぐにでもできる具体的な手法や、深堀をしていただき、非常にありがたいと思いました。

中堀副社長:私も同じ感想ですね。なかでも、私たちで競合状況などいろいろ調査し調べていたことが、今回皆さんにいろいろな視点で情報を集めて調べていただき、その結果は間違っていないと確証が持てたことが、一番ありがたかったと思います。やはり安心できたというか、これからもっと新市場に対して営業をかけていけば将来性があるんじゃないかと自信がもてました。

荒木社長:今回、実務従事に対して「こんなことをお願いします」というような依頼はしていません。塚越先生、梁川先生とは日々のミーティングのなかで経営課題も共有しているので、どういうことを悩んでいて、どうしたいと思っているかももちろんご存じですが、報告書をみて、その私どもの会社の事前情報が、ここまできちんと伝わっていたんだなと、ある意味ビックリしました。自社のことをここまで知って提案していただけたのは大変うれしいですね。

荒木社長:報告会では、それぞれのご担当者に説明していただきましたが、皆さんそこはやはり慣れてらっしゃるのか、プレゼンが非常にわかりやすく、聞いていて飽きない。そういう報告会でした。

中堀副社長:私は営業の人間なので、なんでも対価を考えるところがあるのですが、「これ、実務従事じゃなく、普通に依頼するとどのくらいの費用がかかるの?」と塚越さんに聞きました。本気か冗談かすごく高い金額を言われたのですが(笑)。でも、内容やこれにかけていただいた時間とかも考えると、高いけど安い。それだけ価値がある内容だと思いました。

まとめ

取材を終えて、今回の実務従事の参加者、実施企業ともに満足度が高いのは、やはり中小企業の経営に役立つアウトプットができたことではないかと感じた。実務従事の実施方法・内容は、企業の状況によってもさまざまだと思うが、参加者にとって、いろんな指導員のノウハウを学べる機会として、また中小企業支援の場として、実務従事をフルに活用していただきたいと思う。

取材・文:和田 誠一郎(三多摩支部)、高本 奈緒美(城南支部)

<クロージング>

Webマッチング実務従事案件に関するインタビューを最後まで読んでいただきありがとうございました。一つの実務従事案件に対して、「指導員」「副指導員」「参加者」のそれぞれの立場でのインタビュー内容は、実務従事を運用している立場としても、感じるところがありました。

「指導員」「副指導員」「参加者」のインタビューを通じて、もっとも感じたことは、「実務従事ポイント」という言葉があまり出なかったことです。参加者から出てきた言葉は、「対応している企業をよくしたい」「自分の今持っている力を試したい」「すごくいい経験になった」と、塚越指導員や経営者とのやり取りを通してポジティブな気持ちに切り替わったという言葉ばかりでした。

その結果が、インタビューで紹介したとおり、「経営者」からの高評価につながったのだと思います。「経営者」にとっては、参加者がコンサルティング経験を積むという「実務従事」の目的は、関係がないことです。今回はコンサルティングを純粋に受けたクライアントとして、経営者から「今後、提案されたことを実践しよう」という言葉を引き出すことができ、最高の結果となったといえます。実務従事事業を運営する立場として、この最高の言葉を引き出したことは、大変嬉しいことです。

「実務従事」を体験していない人は、どんなことをやっているか、なかなか把握できないのが正直な話かと思います。今回のインタビューを通じて、実務従事の体験談を情報共有することは重要と考えます。今後も実務従事案件の体験を情報発信できればと思います。

最後に、昨年の実務従事の情報発信の企画でも言いましたが、今回の企画を読んで、とくに企業内診断士が実務ポイントを取得するだけでなく、自分のスキルアップをしたい、中小企業のために有効な提案をしよう、実務従事をきっかけに副業として収入を得よう、さらに自分の経験を指導員になって活かそうと思いましたら、ぜひ東京協会の実務従事の「場」を活用してください。

実務従事支援部副部長 中原 裕之(中央支部)

※東京協会実務従事事業の紹介のURL は、以下の通りです。
・事業概要のほか、指導員・副指導員の申請、実務従事案件の申請の情報もあります。
ぜひご活用ください。
東京協会実務従事事業の紹介
https://t-smeca.com/practice/

※TOKYO SMECA ニュースに掲載できなかった「副指導員」インタビューを、以下に記載
※今回のTOKYO SMECA ニュースの原稿を見て、「私が指導した案件」を事例として掲載したいという方がおられましたら、実務従事支援部に一報をください。
※2022年春のマッチング大会(例年4月開催)に関しては、決まり次第TOKYO SMECA ニュースでお知らせいたします。今しばらくお待ちください。

 

副指導員に聞いてみる(塚越指導員案件の副指導員へのインタビュー)

副指導員:梁川成豪会員(城北支部)
実務従事の副指導員の位置づけは、3つの観点で第三者から見ても難しく見えるらしい。
① 「指導員」の立場で指導するだろうか?
② 「参加者」の立場でとりまとめをするだろうか?
③ 「副指導員」になったけど、案件に出会う機会がない。どのように機会を得るだろうか?
以上から 指導員、参加者と比較してイメージしづらいところであり、一歩前へなかなか進めない。その結果、副指導員を登録したが経験がない人が多数いるのが現状である。
ここでは、塚越指導員の元、副指導員として役割を果たした梁川会員に、「副指導員の経験」に関してインタビューを実施した。

<インタビュー内容>
Q:副指導員をされている年数、実施した企業数はどれくらいありますか。
A:2年前から副指導員登録をしています。実務従事は今回が初めての案件です。なお、実務補習の副指導員は1回経験があります。
Q:副指導員をされている目的は何ですか?
A:塚越指導員とのつながりでやりたいと思いました。また、今回の案件の業種は、かつて勤務していた化粧品業界とも関係しているため、経験を活かせると感じました。
Q:塚越指導員の実務従事の副指導員をされたきっかけは?
A:3年前から塚越指導員と今回の企業を支援しています。その延長戦。塚越指導員との関係性で今回の案件対応を実現しました。
Q:実務従事のイメージは?
A:実務補習は、「資格試験的なもの」の位置づけなので、参加者のやる気もすごくあります。対して、実務従事は、診断士資格取得者ばかりなので、実務補習と雰囲気が違うのは想定されます。 自身の参加経験もないので、どんな雰囲気か、どんな人が参加するかわからない怖さはありました。
Q:副指導員として、実施していること心掛けていることは何ですか
A:今回はコーチングの形で参加者に接し、基本的には余計なことは話さないことを徹しました。
積極的に介入したのは、参加者の議論が拡散した場合、軌道修正するぐらいでした。   (あまりその機会もありませんでした。)
Q:今回の案件で副指導員として準備したことはありますか?
A:今回の案件に際し、特に自分から準備したことはありません。企業の支援にあたって、月に1回は行うモニタリングのための資料を作成しており、その資料が基本データとなりました。実務従事の目的に整理したと言う感じです。なお、受講生向けに不要な情報を抜いております。通常業務の延長のため、準備自体でそんなに時間をかけていません。また、今回の実務従事案件に関して、課題解決の方向性は最初から決まっていたため、情報を取捨選択は行いました。
Q:今回の案件で副指導員としてやったこと(実施したこと)は何でしょうか?
A:できるだけでしゃばらない。でも、聞かれたことは的確に答える。それに徹しました。
ただ、数値計画、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、キャッシュフロー計算書を最後に作るが、特にBSやキャッシュフロー計算書は作ったことがない参加者が多かったので、そのフォローはやりました。
Q:指導員から具体的な指示はあったでしょうか?
A:3年前から一緒にやっている案件なので、定常的に指導員とはコミュニケーションをとっています。事前ミーティングはあったが、特別な指示はありませんでした。
Q:実務従事における副指導員としてのメリットや気づきはありますか。
A:参加者から色々アイディアが出て面白い。いろんな業種の人たちが来ているので、それぞれの立場から色んな意見がでるが、気づきや発見が多くあります。また、指導員からは 指導の仕方を学ぶことができるすばらしい機会であります。
Q:今後の実務従事に期待することは何ですか。
A:今のままの制度で進めてほしいと思う。ただし、独立診断士の立場から言うと少額でもいいので「報酬」がほしいと思います。
Q:次回以降、「指導員」として実務従事案件を提出し、対応したいでしょうか?
A:ぜひやりたいと思う、自分の顧問先企業に投げかけている最中です。
Q:(最後の方で)副指導員はやって良かったですか?
A:よかった。次回は指導員として発揮したい。

<インタビューを終えて>
よく言われるのは「副指導員」の役割である。他の実務従事案件によっては、「副指導員に指導員に役割をさせる」、また「参加者のレポートのとりまとめをやる」など指導員によってまちまちであり、これらが「役割が違う難しい立場」の所以となる。今回の場合は役割分担としてはっきりしていたため、副指導員としてもイメージしやすいといえる。
また、「副指導員」として案件にたどり着けたのも、指導員との今までの関係性が決定打となっている。協会の研究会に、協会の活動による人脈でこれはたどりつける可能性があるということと言えるのではないか?(かくいう私も協会活動を手伝ってから、直接的、間接的で実務従事の機会を得ることができた事実がある)
今回の副指導員の体験談の紹介により、なかなか浮かばない「副指導員のイメージ」を少しでも発見できれば、うれしく思う。また、大多数は副指導員を置かない現状、「指導員」の立場で「副指導員」を活用して頂ければ幸いである。

(インタビュー担当:中原裕之(中央支部))